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春雪 ~キミと出逢った季節 ~

第8章 新しい一歩


~~~!!

お、襲い……!

そ、そうだ、今ユキと私は2人きり……!



「はは、逃げない逃げない」



咄嗟に引っ込めようとした手に、ぐっと力を入れられて


ユキは私を立たせると、そのまま両手を繋いで微笑んだ。



「俺の “ おまじない ” 、少しは効果あった?」

「……えっ……?」

「春ちゃんの痛み。
ちょっとでもいいから、癒えてるといいんだけど」



“ 痛いの痛いの飛んでけ ”



「…………っ」



……冗談ではなくて、本当に心が軽くなっている。


いつも、無理矢理心の奥に閉じ込めていた、泣いても消えない苦しみが


ユキの温かい腕に包まれて、すうっと消えていくような感覚だった。


あんな駅前で、会社の誰かに見られてる可能性だってあったのに……



遠慮がちにユキの手を握り返して、コクンと小さく頷くと



「成功だな♪」



ニッと白い歯を見せて、ユキは私をローテーブルの前まで連れて行く。


用意してくれたココアが、甘い香りを漂わせていた。

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