
20年 あなたと歩いた時間
第5章 20歳
私達が通う大学は、全学部参加の大学祭の他に
医学部だけの大学祭もある。
流星はクラスと部活両方の活動に
多忙をきわめていた。この時期のために、
夏はバイトを増やしたおかげで、
学祭の準備に集中していた。
その学祭もおわり、寒い冬がやってきた。
十二月に入るとさすがに街は
クリスマス一色になる。
キラキラと電飾が派手に点灯すると、
日本は平和だなあと思う。
「のぞみ、クリスマスどこか行きたい?」
こたつに入ってそれぞれ本を読んでいると
流星が突然そんなことを言い出した。
もうすぐ学校は冬休みに入る。
年明けからは私も病院実習が始まる予定だし
忙しくなるかもしれない。
「うーん、寒いからいいや」
と、我ながらかわいくない返事。
だって京都の冬は本当に寒いのだ。
「んだよ、せっかくなんだからさ、デートしようぜ。デート」
流星が狭いこたつの中で脚をつついてきた。
「…考えとくよ」
私は、また本に視線を戻して答えた。
「のぞみ」
「ん?」
「そろそろ寝る?」
時計を見ると、
もうすぐ日付が変わりそうだった。
明日も学校とバイトの、普通の日だ。
「うん。寝る」
「待って」
流星が勢いよくこたつから立ち上がり、
自分の部屋から何か紙袋を持ってきた。
「誕生日おめでとう」
その言葉で私はやっと思い出した。
今日は私の二十歳の誕生日だ。
正確には、あと三分後。
「忘れてた…本当に忘れてた」
「だと思った。人の誕生日は忘れないくせにな」
流星は開けてみて、と言って紙袋を
こたつのテーブルに滑らせた。
それはポケットベルだった。
ピンク色の小さなベル。
携帯電話の使用料がまだまだ高いので、
私達が離れているときの通信手段は、
留守番電話だった。
予定が変更になったら家の留守番電話に
用件を吹き込み、
それを公衆電話から聞くという
やり方だった。
医学部だけの大学祭もある。
流星はクラスと部活両方の活動に
多忙をきわめていた。この時期のために、
夏はバイトを増やしたおかげで、
学祭の準備に集中していた。
その学祭もおわり、寒い冬がやってきた。
十二月に入るとさすがに街は
クリスマス一色になる。
キラキラと電飾が派手に点灯すると、
日本は平和だなあと思う。
「のぞみ、クリスマスどこか行きたい?」
こたつに入ってそれぞれ本を読んでいると
流星が突然そんなことを言い出した。
もうすぐ学校は冬休みに入る。
年明けからは私も病院実習が始まる予定だし
忙しくなるかもしれない。
「うーん、寒いからいいや」
と、我ながらかわいくない返事。
だって京都の冬は本当に寒いのだ。
「んだよ、せっかくなんだからさ、デートしようぜ。デート」
流星が狭いこたつの中で脚をつついてきた。
「…考えとくよ」
私は、また本に視線を戻して答えた。
「のぞみ」
「ん?」
「そろそろ寝る?」
時計を見ると、
もうすぐ日付が変わりそうだった。
明日も学校とバイトの、普通の日だ。
「うん。寝る」
「待って」
流星が勢いよくこたつから立ち上がり、
自分の部屋から何か紙袋を持ってきた。
「誕生日おめでとう」
その言葉で私はやっと思い出した。
今日は私の二十歳の誕生日だ。
正確には、あと三分後。
「忘れてた…本当に忘れてた」
「だと思った。人の誕生日は忘れないくせにな」
流星は開けてみて、と言って紙袋を
こたつのテーブルに滑らせた。
それはポケットベルだった。
ピンク色の小さなベル。
携帯電話の使用料がまだまだ高いので、
私達が離れているときの通信手段は、
留守番電話だった。
予定が変更になったら家の留守番電話に
用件を吹き込み、
それを公衆電話から聞くという
やり方だった。
