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20年 あなたと歩いた時間

第1章 14歳

不思議そうな顔で私を見て言った。
しばらく無言でゆっくり歩いていると、
突然流星が言った。

「今日からだろ、冬」
「うん。そうだね」
「寒くなるんだな、また」
「そうだね」
「あのさ…」
「ん?」
「いや、何もない。じゃあ後でな」

流星は少し先に同じクラスの男子を見つけて
走っていった。後ろから、その彼のお尻を
思い切り鞄で叩いた。
叩かれた彼は驚いて、でも笑いながら
今度は叩き返した。
どうしてあんなことをされて
笑っていられるんだろう。わからない。
男子の頭のなかは理解不能だ。

「のーぞみ。おはよ」

振り返ると真緒が笑っていたが、
その髪はバッサリ肩の上で
切り揃えられていた。

「真緒、髪…」

幼稚園の頃から長い髪が
真緒のトレードマークだった。
子どものころはずっとおさげ髪だったけど、
最近はおしゃれに目覚めて
色んなアレンジをしていたのに。

「心境の変化、ってやつ?」

首に髪が当たってチクチクする、
と言いながら右手を髪にすべらせた。

「随分思いきったんだね」
「かなりね」
「なんでいきなり切ったの?」
「だから、心境の変化だって」

いくら聞いても真緒は
理由を話してくれそうになかったので、
仕方なく話題を変えようとした。

「流星が、元気なかった」
「そっか…私も最近思ってた」

真緒は気になるのか、
ずっと首をさわっている。
日本人形のような漆黒の髪は
白い肌に映えた。横顔がすごくキレイだ。
ぱつん、と切り揃えた前髪も、
切れ長の瞳が強調されている。

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