
妖魔滅伝・団右衛門!
第8章 八千代の想い
八千代は刀を捨てると、刀より鋭利な鬼の爪を向ける。団右衛門が反撃する様子を見せないのを確認すると、首を狙い腕を振り上げた。
「団ちゃん!!」
だが、命を散らす爪は叫び声で止まる。必死に腕を振り、小さな足で駆ける一二三が、息を荒げながら団右衛門に呼び掛けたのだ。
「助けて、あきちゃんが危ない!」
八千代はその小さな体を睨みつけると、舌打ちして呟く。
『……邪魔な餓鬼だ』
そしてきびすを返し、八千代は一二三を狙い飛び出す。襲い来る鬼に一二三はおののき、うずくまった。
すると一二三を殺そうと迫る八千代を阻むように、札が投げられる。それは一二三を守る壁となり、八千代の爪を弾いた。
『ぐうっ!』
八千代は、すぐに目を向ける。絶望にうなだれていた団右衛門は、清正から預かった刀を手に取り立ち上がっていた。
「なんなんだよこの気配……くそっ、最悪の事態じゃねぇか!!」
目の前に気を取られ、団右衛門は全く気がついていなかった。異様なまでに膨れ上がる、禍々しい鬼の気配に。罪もない誰かが犠牲となり、心臓を食われたのは明らかだった。
