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最後の恋は甘めの味で

第8章 イライラ

はぁ、と息を吐き、席に戻ろうとする私とは逆の方向に進む人一人。


顔を見てみれば、その人は私のよく知る人で。


「商談が上手くいったのは大いに結構です。めでたいことです。でも、いつまでもそれに縛られて通常常務を疎かにしたらその努力、限りなく無駄になりますよ?はいはい、席戻る」


ぱんぱんと手を叩き、みんなに指示を出す佳世。


私、一生あなたについていく、と言いそうになるほどたくましい。


佳世は私に視線を向け、パチンとウィンク。



一生ついてく!



声にまでは出さないが、心の中でそう誓う。


ふと、私の上に影ができていることに気付く。


見上げて見えたのは.......忌々しい顔。


「.........何の用?上條くん」


不機嫌丸出しで、言葉を吐き出す私は大人気ないにもほどがある。


自覚もあるが、もちろんこの態度を直す気はない。


ぎろっと上條くんを睨む。



取り敢えず、謝りなさいよ



心の中で唱え、念を送る。


しかし、上條くんはそれを受信するどころかどこか上の空。


「........上條くん?」


さすがに少し心配になり、声をかける。


すると、上條くんははっとしたようにし、私の顔を見る。


じーーーーーーっと、それはそれは長い間。



な、なに.....?



たじろいでいると、上條くんはすごく微妙な顔をして


ハァ.....


とため息ひとつ。


カチン


その瞬間、今日一日、上條くんに対して大人の態度を取らないことを決めた。

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