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指切り

第1章 1章 「少女:出会う」

それは長ったらしい集会での学年主任の話が終わり、私は慣れない廊下を真新しい上履きで教室まで歩いている時だった。
「柚稀ー!」
背後から急に凄まじい声とともに、影が私の背中に覆いかぶさった。その反動で私の体は大きく前に傾く。
「…和香ちゃん」
私は何とか倒れずにその場に踏みとどまり、その影の名前を呼ぶ。すると、影は私の耳元で二ヒッと笑って言った。
「やっぱ、バレるか」
そして、影は私の隣へ歩いてきた。私より何十センチも小さいその娘は私の小学校からの友達だ。
「柚稀と同じ高校かぁ……ねぇもうクラスには慣れた?」
せっかく、お互い受かったのに別のクラスなんてと彼女は呟きながら頬を膨らませながら言う。
けれど、明るい彼女の事だ。すぐ友達が出来ることだろう。私は「まあまあかな」と言った。
事実、クラスの人達はいい人ばかりだった。クラスメイトの中には中学の友達もいる。
これから楽しくなりそうだ。
「あ、そうだ」
空想の中で楽しくクラスでワイワイやっているところを和歌ちゃんの言葉が現実へ引きずり戻した。
「今日から仮入部期間だよね。この後ご飯たら部活紹介でしょ? 何部に入るつもりなの?」
いきなりの弾丸のような速さの質問に、私はつっかえながら返す。
「えっと…写真部か生物部が気になるんだよね」
「生物部ぅ?」
「和歌ちゃんは?」
「んー、とりあえず柚稀についてくよ」
中学で吹奏楽をやっていた彼女が吹奏楽を選ばなかったことに驚いたが、多分もう飽きたのだろう。
「じゃあ、また後でね」
4階までの階段を上がり、私たちは別れた。
時計の針は12時40分を指していて、みんなお昼の準備を始めていた。私はクラスの女子に誘われ、机をくっつけて昼食をとった。一人一人自己紹介をしてメルアドも交換した。ガラケーは私だけだったが…


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