恋してキスして抱きしめて
第20章 ただ、想うだけで
「………傍にいられないとき
遠く離れた場所から、好きな人を想うだけで
なぜか、涙が出てしまう」
あたしと同じ色の瞳が揺れて
お兄ちゃんは静かに続けた。
「寂しいとか、逢いたいとか、色んな感情を超えて
ただ、愛しいって気持ちが、涙になるんだ」
「…………」
………その言葉を、心の中で呟いて、噛みしめながら
涙が止まらない瞳で、あたしはじっとお兄ちゃんを見つめた。
誰かの恋愛話をするとき
お兄ちゃんはいつも、今みたいに切ない表情になる。
「……お兄ちゃん」
ソファに近付いて、お兄ちゃんの横に立つ。
「お兄ちゃんが話してくれた、ユーリさんと朱莉さんみたいになりたいって……ずっとそう憧れていたし
……2人がまた笑い合えるようになったって分かったのに
心から、喜ぶことができないの」
「…………」
「………あたし
ユーリさんが、好きなの……」
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