恋してキスして抱きしめて
第19章 本当の、サヨナラ
………違う。
違うんだよ、千夏。
俺と朱莉は、心から笑うことができたけど
それは、お互いが次に進む為の………
「…………っ」
俺が手を伸ばしても
千夏は首を振るだけで、戻ろうとしない。
たった数十センチの距離が、縮まらない。
「……千夏……」
「…………」
「俺は、お前が好きなんだよ」
……1ミリだって偽りのない、心からの言葉なのに
大量の雨の音にかき消される気がした。
………倒れた朱莉と俺を、2人だけ残して
どんな気持ちで離れていったんだろう。
朱莉を笑顔にさせようと、思いつくものを必死に買い集めて
全身を雨に濡らして、病院に駆けつけてくれた千夏が
朱莉の傍に寄り添い
朱莉の手に自分の手を重ねて
朱莉を見つめて笑う俺を
病室の外側から、どんな想いで見つめていたか………
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