
シアワセ
第1章 始まりと終わり
宮成の後にもう一人と体を重ねて
私は、店の裏に出る
「ふぅ」
さっきの人はそこまでだった
見た目も少し根暗な感じ
風を浴びて新鮮な空気をする
さっきまで口づけられていた唇を無意識にぬぐう。
「………あともう一人かな」
そういって目を瞑る
「大丈夫。大丈夫。大丈夫……」
そう口のなかで呟いて目を開ける
すると私が出てるベランダから見える裏道に人がいる
「?」
街灯に照らされたその人が浮かび上がる
「……っ」
そこで初めて、彼と目があった
遠くてよく見えないけど、彼の月明かりと街灯に照らされた丸い瞳がこちらを仰いでるのが分かる
「!」
私は、急いでベランダから部屋に戻る
「………びっくりした」
あんなところに、人がいるなんて
「あら?どうしたの?清華」
「由利恵さん。…裏道に男がいて…」
「まぁ。こんな時間に?お客さんかしら?」
「……どうだろう」
なんだろう、このドキドキ感
「?」
「どうかしたの?」
「ううん。なんでもないです」
そう微笑むと由利恵さんは帰り支度をはじめる
「……由利恵さん…由利恵さんは……この仕事…どう思いますか?」
「どうしたの?」
由利恵さんは笑いながら私の頬を撫でる
「……そうねぇ。楽しいことばかりじゃないわ。どんなにオーナーに許された人だからって無理矢理な人だって沢山いるわ。でも…貴方のように可愛い可愛い後輩もいて…いい境遇においてもらって…幸せよ」
「由利恵さん…」
「……清華。辛くなったら、少し休みなさい
。この店は幸せな場所よ……他の店なら…休む暇なんてなく体を売ってる子もいる…外になんて出させてもらえない…」
「……はい」
「さぁ。笑いなさい!…辛いときこそ、微笑むのよ」
「はい!」
私は、そう頷く
「……あ、清華さん。良かった。ご指名ですよ」
そう一人の若い男が声をかける
「わかりました」
「いってらっしゃい」
「はい」
私は、由利恵さんに手をふってルームに向かった
