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君の瞳に映るもの

第3章 戸惑い

 私、何か重要なことを、忘れてる?

 思い出さなきゃいけない何かなのに、記憶の途中でそれは寸断されて思い出せない。

 辛うじて思い出せるのは朧気に映る、零一らしき男の顔。

 けれど、はっきりしなくて、それが零一だったのかさえ危うい。

 何かを言っていたような気がするのに、モヤがかかって、わからない。

 思い出さなければと焦るほど、記憶は遠ざかっていくようだった。

 私の中で残っているのは、桐生零一と名乗る男に何度も抱かれたという事実だけ。

 悔しさを通り越して、泣けてくる。

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