テキストサイズ

一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第10章 第一部・第二話【赤とんぼ~小紅と碧天~】 心の嵐

 美桜は呆れたようにもう一度鼻を鳴らし、どぶ板を踏みならしながら下駄の音を響かせて去っていく。
 途中で仕事帰りの大工錠吉に出くわすと、途端ににこやかに微笑んだ。
「あらぁ、兄さん。今日も相変わらず良い男。一度、是非、深川のあたしの見世にも顔を見せておくんなさいよう」
 と、愛想を振りまくのも忘れないのは流石だ。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ