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一度だけ抱いて～花は蝶に誘われてひらく～

第10章 第一部・第二話【赤とんぼ～小紅と碧天～】　心の嵐

　思わず問い返した美桜に、栄佐は吐き捨てるように言った。
「無理に―抱いちまった」
「あんた、小紅ちゃんを手籠めにしたって―そう言うのかい」
　美桜が毒々しいほどに紅い唇を戦慄かせた。
「ああ」
　栄佐が投げやりと頷くと、今度は最初とは反対側の頬が鳴った。
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