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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第10章 第一部・第二話【赤とんぼ~小紅と碧天~】 心の嵐

「そうさ。あんたの頭ン中は始終、あの娘のことで一杯で、所詮、他の女の入る隙間なんてありゃしない。そんなことくらい、このあたしが判らないとでもお思いかい? これでも十一のときから岡場所で生きてきて二十四年、苦界の水にどっぷりと頭まで浸かった女だ。だてに数え切れないほどの色事を見てきたわけじゃない。〝緋扇〟の美桜姐さんを甘く見ないでおくれ」

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