
一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第10章 第一部・第二話【赤とんぼ~小紅と碧天~】 心の嵐
「何もここまで力をこめてぶつこたァねえだろうが。痛ぇじゃねえか」
美桜は紅く熟れた花のような唇を皮肉っぽく笑みの形に引き上げた。
「これは、あたしからのじゃない、あの娘(こ)からの分。たった今、あんたは自分があの娘に対して何をしでかしたのか判ってるのかえ? あの娘の心の痛みに比べりゃア、あんたの頬の痛みなんて、たいしたもんじゃないよ」
「随分な言い様だな。お前だって、今し方の接吻は満更じゃなかったろう」
美桜は紅く熟れた花のような唇を皮肉っぽく笑みの形に引き上げた。
「これは、あたしからのじゃない、あの娘(こ)からの分。たった今、あんたは自分があの娘に対して何をしでかしたのか判ってるのかえ? あの娘の心の痛みに比べりゃア、あんたの頬の痛みなんて、たいしたもんじゃないよ」
「随分な言い様だな。お前だって、今し方の接吻は満更じゃなかったろう」
