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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第10章 第一部・第二話【赤とんぼ~小紅と碧天~】 心の嵐

 刹那、栄佐が美桜の腰を抱き寄せた。逞しい腕を細腰に巻き付けしっかりとかき抱き、更に美桜の顎をつまんで口づける。貪るような口づけは単に口づけというにはあまりにも濃厚で淫らなものだ。それはあたかも二人が一糸纏わぬ姿で絡み合う様を容易に連想させ、今し方、洩れ聞こえていた美桜の艶っぽい声ももしや―と想像を逞しくさせるには十分だった。

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