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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第10章 第一部・第二話【赤とんぼ~小紅と碧天~】 心の嵐

「あたししゃ、絶対にあの二人はとうにできちまってると見たね。それにしても、色っぽい女将だよね。流石に仕事柄っていうのか。うちの宿六亭主なんざ、あの女将を見かけると、鼻の下伸ばしやがって、もう、みっともなくて見てられないって」
 その時、おしかの後ろから、五歳くらいの男の子が出てきた。
「母ちゃん、おしまがお腹が痛いって」
 おしかが大仰に天を仰いだ。

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