テキストサイズ

一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第7章 第一部・第二話【赤とんぼ~小紅と碧天~】

「それは迂闊にも知らなかった。江戸生まれの江戸育ちなのに、恥ずかしいことです」
 それには何も言わず、小紅は微笑む。
「今日、私がお参りにきたのも恋愛ではなくて、そっちの技芸上達の方なんですもの」
「そうなんですか」
 市兵衛は納得したように頷き、首をひねる。
「余計に気になりますね。あなたじゃないとすると、一体、どんな人の技芸上達を祈願したのか」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ