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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第7章 第一部・第二話【赤とんぼ~小紅と碧天~】

 市兵衛はひそやかな笑い声を立てた。
「何だか妬けますね。そのお方はあなたにとってはよほど大切な人なのでしょう。先刻から祈っているあなたを見ていたら、自分のことでもこれほどは熱心になれないのではないかと思うほど熱心に祈っていましたから」
 そこで市兵衛はふっと笑みを消し、真顔になった。
「でも、少しだけ安心しました。ここは恋愛に関しての願いを叶えてくれるということで有名ですから、てっきり、あなたに好きな男でもいるのかと勘違いしてしまった」

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