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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第7章 第一部・第二話【赤とんぼ~小紅と碧天~】

 長屋の木戸を抜け、向かった先は随明寺であった。
 随明寺は江戸でも名の通った名刹である。開基は浄徳大和尚、京都の万福寺を開いた名僧隠元隆琦の高弟だ。月に一度、浄徳大和尚の命日には広い境内に露店が建ち並び、縁日市が賑々しい。その中でも年に一度、秋に行われる縁日は大祭(たいさい)と呼ばれ壮観で、あまたの僧侶が本堂で経をあげた後、回廊に出て紅白の餅をばらまく。

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