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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第4章 【残り菊~小紅と碧天~】 流星

 美桜は言いたい放題言うと、〝じゃ、あたしはこれで帰るわ〟と、あっさりと帰っていいった。
「まったく、何てヤツだろうな」
 栄佐は呆れたように首を振り、小紅を見た。
「マ、ああいう女だけど、根は悪いヤツじゃない。美桜は深川の岡場所で小さな見世をやってる。そこの女将なんだ」
「栄佐さんはお医者さまなんですか?」
 小紅が訊くと、彼は呵々と笑った。
「そんなごたいそうな代物じゃねえよ」

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