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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第28章 第二部・第六話【春咲く花】 春咲く花

「許してくれ、爺」
 かつて幼かった五歳の頃、源五の背におぶわれて庭を歩いたあの日、源五を相手に剣術の稽古をしたのは確か十歳であったか。
 守り役と過ごした幾つもの想い出が栄佐の脳裡を駆け足で行き過ぎた。
「殿の好きになさるがよろしいでしょう。私はこれより別邸に移りますゆえ」
 いつしか瑞容院が傍らに佇んでいた。

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