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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第27章 第二部・第六話【春咲く花】 逢瀬

「らしくもねえ殊勝なことを言うな。よほど川辺屋で怖かったか?」
 栄佐が笑いを含んだ声音で言うのに、小紅はかぶりを振る。
「怖いのは怖かったけど、自分の身がどうなるかっていうことよりも、もう二度と栄佐さんに逢えなくなる方がもっと怖かったの」
 刹那、栄佐が絶句した。
「俺もだ、小紅。俺もお前の笑顔を二度と見られねえかもと思っただけで、気が狂いそうになった」

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