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　茶店は、おうめという六十ほどの婆さんが一人で切り盛りしている。花見時分には随明寺の花見客が立ち寄ることが多いので、その時期だけは手伝いの娘を一人雇うが、普段は大抵、一人だ。
　そのおうめが茶店から一部始終を見ていて、慌て桜団子を買って帰ったばかりの栄佐を追いかけ呼び戻してきたのである。
「まったく運が良かったとしか言い様がねえ。もし、俺があの時間にここに来てなけりゃ、お前は今頃」