一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第25章 第二部・第六話【春咲く花】 再会
母は良人である父の関心を得るのを諦めてからというもの、一人息子の栄佐を余計に溺愛した。その過剰な愛情が幼い栄佐を余計に母から遠ざからせてしまったのは皮肉な話だった。母の価値基準はいまだに身分だとか出自を中心に決められているのだろう。父が母のそういう権高なところを嫌っていたことを母は知らない。
いや、たとえ知っていたとしても、母の長年、身に滲み込んだ考え方が変わったとは思えないから、知らない方が母も気が楽だったかもしれない。
いや、たとえ知っていたとしても、母の長年、身に滲み込んだ考え方が変わったとは思えないから、知らない方が母も気が楽だったかもしれない。
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