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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第20章 第二部・第四話【悲願花~女になった男~】 定命  

 小紅の方は唐突に彼が抱きしめてきたものだから、俄に警戒したようだ。小さな両手を突っ張って栄佐の胸を押し返そうとする。
「静かに。少しだけ、このままでいさせてくれ」
 栄佐は熱をはらんだ低い声で囁き、小紅の漆黒の髪に顔を押し当てた。
「良い匂いだ」

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