テキストサイズ

一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第15章 第一部・第三話【戀月桜~こいつきざくら~】 すれ違い

 小紅の花のような唇が少し震えた。心なしか顔も血の気が引いている。
「栄佐さん、これはもしかして、盗品なの?」
 小紅の瞼に一度だけ見た宗徳寺の盗品売買の様子がありありと甦っていた。男たちが囲んでいたお宝の山にはこの血赤の色に染まった珊瑚細工もたくさんあった。
「小紅、お前、何言って―」
 栄佐の面からも血の気が失せた。
 小紅が縋るような眼で栄佐を見た。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ