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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第14章 第一部第三話【戀月桜~こいつきざくら~】 熾火(おきび)

 栄佐がついに振り向いた。
「お前―、見たのか!?」
 普段、感情を露わにせぬ彼がここまで狼狽えるのは珍しい。
 小紅は頷いた。
「見たわ。今月の五日、栄佐さんの後をつけたの。五のつく日の夜に出かけるのはとっくに判ってたから。あなたの後をついていったら、宗徳寺だった。そこで―」
「止めろッ」
 栄佐の怒声が小紅の言葉を鋭く遮った。

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