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とあるホストの裏事情・完

第24章 さわらないで



家に着いた。
でも、まだ研斗は起きない。
とりあえず、服を着せる。
寒かったよな・・・
ベッドに寝かせると、研斗は顔をしかめた。そして、小さく唸る。
苦しそうに、一度息をついたあと、またすぐに眠る。


研斗が、遠い気がした。
こんなに近くにいて、研斗に触れているのに。

とても、遠い存在のように感じる。

気づけば俺は、ある人に電話をしていた。


◇◆◇◆◇◆


ピンポーン

俺の気持ちとは裏腹な、軽やかなチャイムの音。
返事をせずに玄関に行く。
ガチャッ、とドアを開くと、俺が電話した男が心配そうな眼差しで俺を見た。


「・・・氷悠、俺・・・」
「わかったから、とりあえず中入れて」

俺が返事をするより先に、氷悠は中に入っていた。



「・・・まだ寝てんの?」
「あぁ。起きない。苦しそう」
「・・・なんでこんなことになるかなぁ」
深くため息をついて、研斗の頬に触れる氷悠。不思議と、嫌な感じはしない。
「研斗が起きるの待ってたら、いつになるか分かんねーな」
「・・・泊まってく?」
「・・・そーする。正直、将悟のことも心配だし」
「ありがとな」

俺のことも心配してくれるなんて、どこまで優しいんだ。
今日の氷悠からは、女の香水の匂いはしなかった。
最近、抱いてないのかな。
今日は、朝まで氷悠と話がしたい、そう思った。

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