溺れる愛
第6章 変化
─────……
ダンッダンッダンッ
キュッキュッ…
ボールの跳ねるリズミカルな音と
バッシュの地面を擦れる音が体育館に響いていて
舞台に座りながらバスケ部の練習をぼんやり眺める。
芽依の目には当然俊哉しか写っておらず
皆に指示を出しながら汗を流す彼をドキドキしながら見ていた。
(いつもはあんなに遠くからしか見れなかったのに…今はこんなに近くで見られる…。)
決まって水曜日に屋外でシュート練習をしていた俊哉しか知らなかった芽依にとって
今のこの状況は夢見心地。
一つ一つが新鮮で、噛みしめるように、食い入るように
頭に刻み込んでいた。
「10分休憩ー」
俊哉の号令に
「はい!!」
と皆が返事をして
ぞろぞろと水分補給をしたり団欒したりそれぞれだ。
「芽依ちゃん、暇だよね?ごめんね」
ハンドタオルで汗を拭いながら、スポーツドリンクを片手に駆け寄ってくる彼は
いつもの制服姿ではなく、練習用のユニフォーム。
半袖から覗く逞しい腕と、ハーフパンツから伸びる鍛え抜かれた脚が男らしい。
『いえ、全然…!皆さんすごく格好良くて、見ていて楽しいです!』
珍しく饒舌なのは、本心だったから。
「ありがとう。そう言って貰えると余計に張り切っちゃいそうだよ」
ニコッと歯を見せて笑う俊哉が眩しい。
つられて芽依も、照れたようにニコッと笑った。
作品トップ
目次
作者トップ
レビューを見る
ファンになる
本棚へ入れる
拍手する
友達に教える