
溺れる愛
第28章 あなたの深い愛に溺れていたい
『いったぁ~!!ちょっと…血出てない!?』
本当にそれぐらい痛くて、幻なんかじゃないんだって実感する。
涙目で睨む私に、那津は飄々とした態度で隣にドカッと腰掛けた。
「出てねーよ、ばーか」
『ちょっと…さっきからバカバカって…!』
「仕方ねぇだろ?本当の事だし」
『うっ…そんな事ないわよ!
これでも少しは勉強して────』
そこまで言って、今度はいきなり壊れるほど強く
那津の腕にギュッと抱き締められて
私はもう何も話せなくなった。
「はあ~…やっと見つけた」
私の首筋に顔をうずめて、那津は安心した様にそう呟いた。
那津が話す度にくすぐったいけど、それすらも愛しくて…。
『これは…夢?』
「ちげぇよ、バカ」
『またバカって言った…』
私達は、良く晴れた昼下がりの大きな公園のベンチで
足りなかった何かを埋めるように
静かにひたすら抱き締め合っていた。
