溺れる愛
第28章 あなたの深い愛に溺れていたい
「…は?」
「あの時の彼女は、憂いを帯びていて綺麗だったなぁ…。
こんな呆けた野郎には勿体ない」
「ちょっと待て。ていうか何呼び捨てにしてんだよ」
「抱き締めた時、あまりの小ささと
それでいてこう身体に吸い付いてくるようで…」
そこで俺は我慢出来ずにデスクを思い切り殴って、鋭い視線を誠司に送った。
でもコイツは何食わぬ顔で
飄々と続ける。
「この俺があそこまで紳士に振る舞って
俺にしとけって言ったのに…
芽依はずっと誰かさんを思い続けていたなぁ」
「…っ」
「なぁ。本気で芽依はお前を嫌ったと思っているのか?
だったらお前は相当な阿呆だぞ」
そんな事…だけど俺には
そこまでの自信は無いんだ…。
「今度こそ、本気で芽依をお前から迎えに行く時じゃないのか?」
「……」
「芽依が…敢えて身を引いた理由…
知りたくないか?」
俺は、誠司をじっと見つめた。
こいつ…何か知ってるんだな。
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