溺れる愛
第16章 冷雨
那津は一瞬ぽかーんとしてから
みるみるうちに驚いた表情になって
「なんでだよ!」
と、今度は少し怒ったように大きな声を上げた。
(何怒ってんの?意味わかんない!)
つられてムッとなってしまった芽依は
嫌みったらしく悪態をついてしまう。
『なんでって…あんたがキスマークなんかつけるからでしょ!?』
「…それが原因か?」
『うっ…それもあるかも…』
「それもって何だよ。他もあるって?」
(本当の事…言わないと…!)
『私から…別れて下さいって言った』
今度は本当に驚いた表情のまま
那津は間の抜けた声で返事をした。
「……は?…なんで?」
『………浮気してますって…正直に言った…』
那津の反応一つ一つに過剰に反応してしまう。
内心びくびくしながらチラリと那津の表情を伺うと
彼はもういつもの無表情に戻っていて
やはりそこからは何の感情も読み取れなかった。
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