溺れる愛
第13章 疑惑
「…芽依…飯食ったか?」
那津が何でもない様な顔で話し出す。
『…ううん…でも…もういらない…』
(食欲なんて…無くなっちゃったよ…)
「弁当、親が作ってくれたんだろ?」
『…そうだけど……』
「食ってやれよ。」
(何の話なのよ………)
あぁそうかと、その時思った。
思い遣り。
俊哉にも何か事情があるかもしれないぞと
凄く遠回しに那津が言っている事がわかって、
そんな事を受け取れてしまうくらい
近い存在になってた事に少し驚く。
『じゃあ…那津が食べて…』
「…いいよ。俺が取ってきてやるから
芽依はここで待ってろ」
相変わらず命令形で話す彼の後ろ姿を見送って
だけどそれが嫌な訳じゃない自分がいて。
頭の中には二股の二文字がぐるぐる回っている。
芽依はただボーッと目の前に揺れる大きな木の木の葉を眺めていた。
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