溺れる愛
第10章 距離
「凄いでしょ。なっちゃんの人気」
波瑠がお盆を片手に芽依に話しかけてくる。
『そうですね』
那津は相変わらずひっきりなしに声をかけられていて
仕事どころではなさそうだ。
「毎年あぁなのよ。だからこの店は基本的に女性客と家族連ればかりなの」
『言われてみれば…そうですね』
「でも今年は男性客も増えそうだな、芽依ちゃんがいるから」
そう言って波瑠はにっこり笑う。
多分波瑠にはイケメンの和人がいるから、男性客も寄り付きにくいのだろう。
『私が居ても別に変わらないですよ』
少し照れて返事をすると、波瑠は入り口の方へ目を向けて
「ほら、噂をすれば…二名様ご来店ね」
『え…?』
そこには若くて少し軟派そうな男2人が立っていた。
「大丈夫。何かあればなっちゃんもいるし私たちもいるから!接客お願いね」
パシッと肩を弾かれて、いらっしゃーいと屈託なく笑って波瑠はカウンターへと戻っていった。
『いらっしゃいませー』
芽依もそのまま、今来た男性客へと挨拶をして席へ誘導した。
(よし!頑張ろう!)
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