溺れる愛
第10章 距離
「あー…そうだったな。
前になんか絡まれてたっけお前」
那津は思い出した様な素振りでこちらに向き直り
「あったな、お前でも」
と、なんとなく優しい笑顔を向けた。
(…もう…何なのよ…)
意地悪を言ったかと思えば優しくしたり。
冷たい態度をとったと思えばまた優しくして。
(でも…ハッキリさせなきゃ…。私はもう先輩の彼女なんだから。)
もう那津に身体を弄ばれる事は阻止しなくてはならない。
意気込んでいると、後ろから声がかかった。
「芽依ちゃん。ちょっとこっち来て」
カウンターから波瑠がウインクを寄越してくる。
『はい!何ですか?』
「芽依ちゃんのその格好…ちょっと海の家っぽくないわよね。私の服貸してあげるから着替えよっか」
その言葉に自分の格好を改めて見下ろす。
訳も分からず那津に呼ばれたので
特にお洒落もせずに簡単なトップスに七分丈のパンツ。
メイクもしていなかった。
「せっかくなんだし、夏の良い思い出にしてほしいから、ね?」
また屈託の無い笑顔を向けられて
断りきれずに頷いた。
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