片想いの行方
第63章 2人の蓮
「……瑠璃…………!」
初めて出逢った頃のように、制服姿で俺に話しかける瑠璃を見て
俺は慌てて目に残った涙を拭う。
「どうしてここに……」
「そんなのこっちが聞きたいわ。
この席に座ったあなたを見て、仕事とはいえ、直前まで話しかけるのを躊躇った」
真っ赤なルージュを光らせて、瑠璃はクスクスと笑う。
「フラれてから1週間も経ってないのに、こんなところで再会なんて。
あれだけ別れを演出したのに、お互い気まずさ極まりないわね」
「…………はは……」
奇跡に近い偶然だな………
合わせて俺も苦笑すると、瑠璃はその場にすっとしゃがんだ。
「………私が注入したパワー。
蓮の片想いに乗って、ちゃんと彼女に届いたかしら?」
日本人離れした大きな瞳が、瞬きひとつせず俺を見つめる。
………………
「………残念ながら」
俺はふっと笑って続ける。
「もっと大きな相手の想いを尊重したから、空高く舞って消えたよ。
その代わり、陰から支えるヒーローとして、永遠に名を残す勲章を得た」
作品トップ
目次
作者トップ
レビューを見る
ファンになる
本棚へ入れる
拍手する
友達に教える