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色んな客に囲まれて対応していたから、気付いた時にはもう遅かった。



タイミングを見計らっていたであろうヤスに、どこか寂しげな表情で声をかけられて




螺旋階段を上がったその先には、既にもうアンナしかいなかった。







「………ごめん、ヒメ。

あんたの元カノは予想外だとしても、私が2人の話をするなんて間違ってたわ……」






美和が出ていくまでの経緯を俺に説明すると


アンナはゆっくりと頭を下げる。






「美和は……ヒメに心から感謝してる。

今回の事でいつかの恋心を思い出して、もう一度あんたに惹かれたのは確かなのよ」






顔を上げて夜景を見つめながら、アンナは静かに続けた。






「だけど


私達が思っているよりも、ずっと深い記憶が……


美和にしか知らない、蓮くんとのかけがえのない１年があるのよ。


きっとどこかで美化してるだろうし、思い出は綺麗なものだけど。


美和にとっては、大切に重ねた時間なんだわ」




「………………」






俺が黙ってその言葉を聞いていると


アンナはボトルを持って、俺のグラスにワインを注いだ。