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片想いの行方

第58章 忘れられない人

ズキズキと胸が痛む。


私はアンナから目を逸らした。





「……そんなの、分からないよ」


「……!分からないわけないでしょ?
ヒメがどれだけ美和の為に……」


「だって、私の他にもいっぱい女がいるって言ってた。
ヒメはああ見えて誰にでも優しいから、きっと同情心でしてくれたのよ」


「美和。
本気で言ってるなら……怒るよ?」





アンナは低い声でそう言ったけど


大きくため息をついて、優しく続けた。





「……美和、あのね。
あのチャラチャラした男の言葉が信じられないってのも分かるよ。
だけど、他にも女がいるっていうのは、きっとあいつが……」




「あの~、ちょっとイイですか?」






突然、後ろから声がして。




私とアンナが同時に振り向くと、螺旋階段を上がって来た女の人が、こっちを見てにっこり笑った。



………誰?





「突然すみませーん。
下のフロアから偶然見つけちゃって。
“美和”って名前を聞いたからやっぱりそうじゃーんって思って」



「…………!」


「何ですか?」





名前を呼ばれ、驚いて声が出ない私の代わりに、アンナが怪訝そうに聞く。



見た目は私達と同い年くらいだと思うけど、まったく見覚えがない。




「あたし、ヒメと同じ大学で。
そんで、ヒメの元彼女です♡」



「…………!」






その人は笑顔を消した。





「あたしはまだ、ヒメの事が好きなんですけどね」

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