
片想いの行方
第37章 ひとつだけの宝物
……………………………………
………それがこのパンチかよ!
水泳で鍛えられた全身の力を込めて、本気で殴ってきやがって………
何がお返しだ。
俺の優しさが溢れた、あの時の一撃と一緒にするんじゃねー!
……いや、そんなことを考えるのは後でいい。
今はとにかく美和を…………
「………………!」
立ちあがろうとした俺の服の袖を
美和がそっと掴んだ。
「………美和………?」
「………いいの……
ヒメ……
追いかけないで………」
美和はもうひとつの手で、きゅっと目をこすって涙を拭いた。
そして、コートの中からハンカチを出して、俺の前に差し出した。
「………痛いよね……大丈夫?
………ごめんね……」
「………………!」
