
隠れて甘いkissをして
第49章 七瀬隼人
隼人のお母さんは美しく、誰に対しても優しくて
その魅力から、皆から愛されるような人だったらしい。
そんな彼女が演じる役はどれも素晴らしくて
小さい劇場はいつも、彼女を見る沢山のお客さんで溢れていたそうだ。
「ある日の舞台。
観客の中に、妹の噂を聞きつけて熱心に観ている1人の男がいてね。
ワシもちょうど同じ客席にいたんだが、その男の風格はズバ抜けていた。
後から聞くと、父親がスペイン人・母親が日本人のハーフでな。
痺れる程のいい男なんだ。
当時その男は世界中を飛び回る、有名な人気演出家だったんだが。
その小さな舞台で、うちの妹に一目惚れをした。
そして
運命かのように、妹もその男に惹かれて心を奪われたんだ。
……お互いが恋に落ちたのさ」
