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華のしずく~あなた色に染められて~

第2章 二

 逢いたくないと言えば、嘘になる。でも、今は、心に癒えぬ傷を負った信成の傍にいたいと思った。今の信成には心を許せる存在が必要だ。自分が信成を突き放せば、信成は脆くも崩れ去ってしまうかもしれない。
「そうか」
 しばらくして返ってきた信成の声には明らかに安堵の響きがあった。
「そなたの家族は?」
 信成の問いに、珠々は微笑んだ。
「母と二人の弟妹がいます」

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