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　何より、珠々は信成を良人として愛している。信成でなければ、駄目なのだ。信成以外の男に触れられるくらいなら、身を八つ裂きにされて死んだ方がよほどマシというものだ。それに―、信成は妻を贄として我が身の保身をはかることなど絶対に望む男ではない。そんなことをするほどなら、彼もまた自滅の道を選ぼうとするだろう。
　その一方で、今、秀吉の許へ自分がゆくとひと言いいさえすれば、もしや信成の身は、この朱雀の国は安泰が保てるのでは―、そんな相反する想いに珠々の心は揺れ動いた。