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華のしずく~あなた色に染められて~

第3章 【華のしずく】~夏雷~

 なにゆえ、今宵はこのような馬鹿げたことを考えるのかと人知れず吐息を洩らしたその時。
「お館様!」
 背後から常ならぬ貞親の声が響いた。信成暗殺を企む前家老真邊時房の野望を未然に阻止し、現在の家老職にもある人物であり、それゆえに信成の信頼もひととおりではない。貞親も主君の信頼に応えるべく、忠勤ひとすじであった。普段は沈着で狼狽した様は滅多に見せない貞親のこの取り乱し様は―。

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