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華のしずく~あなた色に染められて~

第27章 【月華-月姫(TSUKIHI)-~華のしずく~】幻の蝶

「いいえ、何も」
 と、秀信が上半身を起こし、月姫の顔を覗き込んだ。
「わしに嘘を申すな。あの女がそちに嫌味の一つも申さぬはずがない」
「―」
 月姫の瞳に涙が滲んだ。
―女郎上がりの、しかも異国の女をお傍に召し上げられるとは、殿も酔狂なお方よ。
 定子の昼間の侮蔑のこもった言葉の数々がよぎる。

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