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禁断兄妹

第54章 由奈~終わりの始まり②~


「‥‥嬢‥‥?!」


「ツトムさん‥‥久しぶり」


修斗が店長を任されてる高級クラブ
開店前の店へ顔を出した私に
ツトムさんはそれっきり言葉が出てこないほど驚いていた。


「用事があって帰って来たから、ちょっと寄ってみたの。良かった、ツトムさんがいてくれて」


「そうでしたか‥‥いやあ、びっくりしました‥‥お元気そうで何よりです」


私が実家にいた頃からこの店のチーフを務めているツトムさん
修斗より一つ年下
ヤクザらしくない人懐っこく明るい性格で
物怖じせずによく喋る。

修斗以外では唯一気安く話ができる人だったはずなのに
驚きが収まった後もツトムさんの表情は固くて
警戒心のようなものが感じられた。


「‥‥用事って、ご実家に帰られたとかですか?」


「おじいちゃんの家に行ってきたの」


おじいちゃん、という言葉に
ツトムさんはふっと頬を引き締めた。


「会長に‥‥」


うちの組の会長であるおじいちゃんは総本部の執行部を務めているから
基本的にこちらにはいないし気楽に会える存在じゃない。
私は事前におじいちゃんと連絡を取り
東京へ出てきてから初めてこの町に帰ってきていた。


「実家には行ってないの。明日も仕事だし、寄らずに帰るわ」


実家に立ち寄る気は初めからなかった。

父親は塀の中
母親は後妻
どちらにしろ私は養女だ。

ツトムさんはそんな複雑な家庭環境を知っているからか
そうですか、と言っただけで
それ以上実家の話はしなかった。

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