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禁断兄妹

第89章 禁断兄妹


「その直後に妊娠してしまった彼女が、どれほど悩み苦しんだか知っていますか?早死にしたのもその心労が原因だと言っても過言では───」


「黙れ!!」


怒声と共にKENTAROの手が伸びて
引きちぎらんばかりの力で
胸ぐらを掴まれた。


「俺が殺したとでも言いたいのか‥‥?ふざけるなよ‥‥殺したのはお前と巽だろうが‥‥」


思いもしない言葉に
時が止まった。


「お前が夏巳の腹に巣食い、貪欲に居座り続けたから、夏巳は命を削ってまでお前を産んだ‥‥お前さえいなければ、夏巳は今も生きていたんじゃないのか‥‥?!」


「なっ‥‥」


「巽は夏巳の側にいながら、どうして夏巳が弱っていくのを指をくわえて見ていた?何故むざむざと夏巳を死なせた‥‥?!」


むざむざ
そんな


「本当に適切な治療を受けさせたのか?あらゆる手を尽くしたのか?お前らは夏巳の側にいながら、一体何をしていたんだ‥‥?!」


意図的にKENTAROの怒りを誘った
彼の本音を引き出す為に

しかし
あまりにも身勝手で一方的な言葉に
絶句する。


「俺はあれ以来、夏巳にはただの一度も近づかなかった‥‥顔を見ることも声を聞くこともせず、俺はそれに耐えて生きていたのに、お前らは夏巳の側にいながら、幸せにするどころか、あんな若さでむざむざと死なせて‥‥っ」


茫然と見つめていたKENTAROの鋭い瞳が
泣き出しそうに歪んだ。


「どうして夏巳を死なせた‥‥どうしてもっと大切にしてやらなかった‥‥どうして‥‥っ」


あれ以来ただの一度も

それに耐えて生きていたのに

それだ

それこそが
俺の知りたい真実


「‥‥あなたこそ、どうして母の前から姿を消したんですか?何故会いに来なかったんですか?」


「うるせえ!!俺は、俺は‥‥っ」


KENTAROは歯ぎしりするように
力尽くで言葉を飲み込んだ。


「母は病院のベッドでいつも窓の外を見ていました。それは、あなたを待っていたからだったのかも知れないのに‥‥!」


「やめろ!!」


強く突き飛ばすように手を離されて
俺は雪の上に転がった。


「もう二度と俺の前に現れるな‥‥っ」


叫ぶように吐き捨てて
背を向けたKENTARO

広い背中が
足早に遠ざかっていく。

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