禁断兄妹
第64章 聖戦②
病院に着くと
待ち構えていた看護師が有無を言わせず
萌をストレッチャーに乗せて運び去り
見送ったまま立ち尽くす柊兄は
諸々の手続きの為に
受付へ行くよう促される。
俺は動かない柊兄に代わって
受付の場所や必要な手続きを聞き
電話がしたいのでそれが終わったら行くと言って
案内しようとする看護師を遠ざけた。
「さ、まずはお父さんのいる病院に電話しよ。
‥‥それから、手を洗ったほうがいいかも」
まだ動かない肩を抱きながらそう言うと
柊兄は
萌の血が赤黒く乾いた両手に
視線を落とした。
「そうだな‥‥電話しなきゃな‥‥」
片手を持ち上げて
親指でゆっくりと唇をぬぐうように指先を舐めた横顔は
まだ青白くて
危うくて
「どうしてこんなことになっちまったのかな‥‥」
視線を落としたまま
独り言のように呟いた言葉に
答えは見つからなくて
俺は肩を抱く手に
力を込めた。
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