
禁断兄妹
第61章 消せない傷
ケンカをすることもない
二人の兄弟の
平和な日々
灰谷さんのお母さんは
教育熱心で
二人とも色々習い事をしていて
そのひとつが
学習塾だった
「二人で同じ塾に通っていました。
私は嫌々で、友達と会うことに楽しさを見いだしていましたが、優希は優秀な生徒でした‥‥」
淡々と話を続けていた灰谷さんは
そこで言葉を切ると
大きく
深呼吸をして
「私が六年、優希が四年生の夏休みです‥‥その塾におかしな噂が流れました。
優希が、若い男性講師とできてるという噂です。
講師が膝の上に優希を乗せ、卑猥な行為をしていたと」
眉を寄せた灰谷さんの瞳が
遠くへ目を凝らすように
細くなった。
「当時の私には理解不能なガセネタでした。
噂を耳にしたその夜、私は就寝前に二段ベッドの上段にいる優希に声をかけました。
『あの噂、嘘だろ?』と。
優希はいつものように、豆電球のほのかな明かりを頼りに本を読んでいるはずでした。
でも、どんなに待っても返事はなくて‥‥しばらくして、そっと本を閉じる気配がしました。
私はその一言きり‥‥何も言えませんでした」
遠くを見つめる瞳に
光が
揺れた。
「噂は塾生達の格好の話題となり、そして夏休みが明けた学校にあっという間に飛び火して‥‥
‥‥優希は、いじめられるようになりました」
