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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第2章 壱の巻

 母の遺言ともいうべき
―姫さまのことを頼みますよ。
 その言葉をどのようなことがあっても守り抜く覚悟であった。
 相模はそれとなく視線を動かし、公子の指す方を見る。確かに、庭の雪柳は今が盛りであった。白い小さな花を無数につけた枝は地面に届きそうなほどに、重たげだ。
 この可憐な花は、どこか薄幸な―それでも、薄幸ささえ感じさせない優しくて屈託ない女主人に似ている。

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