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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第6章 伍の巻

 顔を上げると、人相も風体もおよそ良くない男が二人、眼の前に立っていた。着ている水干は薄汚れ、元の色も定かではないほど真っ黒、括り袴からは毛脛がにょっきりと出ている。二人とも筋骨逞しい男で年の頃は三十そこそこといったところか、髪の毛はボサボサで、少し離れた公子にも二人から漂う悪臭が匂った。

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